失踪

慰めのひとつが欲しい
触れているだけで全身が透き通るような
そんな胡散臭い御伽噺(おとぎばなし)にも縋りたく思う
それほど今の俺は憔悴している

脆さや儚さ、弱さの中で息をしている強さ
それが本性で 矜恃(きょうじ)(よすが)であってくれたらなあ

俺は今まで何に救われてきたのか
それが思い出せないんだとしたらもう
死んでいるのと大差は無い

なけなしの光と路銀とたずさえて
一生に値する一日を求め彷徨っている
「明けるな、明けるな」と月に乞うている
朝を夜と錯覚する事しかもう
俺の正気を保つ術は無い

失踪

失踪

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-08-31

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