追憶の海

時間も場所も決めない待ち合わせをする度に
最期まで逢えなかった人の姿がよぎる

追憶の沖では 筏のような氷島が悠々と浮かんでいて
そこにはもう逢えない人達がいるんだろうと
いつも なんとなくそんな気がしていた

偶然、岸に漂流したそれに触れようとすると
目には見えない結界のようなものが張られていて
手をとることはおろか、
声を聞くことも出来なかった

熟れた実をひとり頬張り、
その種を埋めることの繰り返し
誰か、誰でもいいから替わってくれよ、と思う
替わってくれよ、早く

報われない憂いの洪水に溺れてしまいそうになる

きょうの海はいつになく、深い藍色をたたえていた

追憶の海

追憶の海

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-08-16

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