軽薄

渡逢 遥

何か禍々しいものが肌に溶け出して
気づかないうちに浸透し、からだ全体を循環しているような気がする
言葉で人を殺せるなんてその時はまだ知らなくて、
実際に殺害してしまって始めて、言葉の殺傷性を自覚する
生きている限り、誰もが加害者であるということ
それを銘じている人間しか、本当の意味で言葉を選ぶことはできない
言葉を選ぶということは、あらゆる可能性を想定しているということ
選択一つ間違えれば、相手に消えない傷を負わせてしまうということ
無防備ではない状態で優しいといわれることに罪悪感を抱いてしまうこと
優しさとは、怯えの一種でもあるということ
そのどれもが、あなたを加害者たらしめている
その時に、自分自身を含めて、言葉をつかっている限り、誰もが加害者であると同時に、誰もが被害者であるという事実を受け入れなければならない
自分をかたちづくるのも、相手を歪めてしまうのも言葉であり、言葉とは自分であり、自分に責任を持たなければいけない
軽薄という変幻自在な尺度に対する、途方もない絶望に耐えつづけなければならない

軽薄

軽薄

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-08-01

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