料理という罪

 料理というものを知っているだろうか。
 あいにく私は料理を知らない。私が生まれたときはすでに政府が配給している調整された完全なる食事、所謂栄養補給ゼリー状食事、通称ゼリー食が始まっていた。
 ゼリー食は、人間が活動する最低限以上の栄養を短時間で摂ることができる点において最も優れている。政府は長期的に人類の繁栄のため、前時代のような手間と時間のかかる料理(といっても知らないのでイメージが湧かないが)を禁止し、統一した食事による食糧の持久力の伸ばすことにした。
 私が知る限り、料理というものは調達、調理、調味の三つのことなのではないかと考えている。なぜならこれら三つのことは政府が食罪として定めているからだ。料理により手間暇をかけるくらいなら、もっとも効率の良いゼリー食を食べ、時間を有効活用したほうが良いのだというのが政府の考えである。
 しかし、禁止されていても知ることはできた。まだ若かったころ趣味の読書を通して料理というもの初めて知った、というよりは前時代に書かれた本には必ずといっていいほど料理が出てくるので嫌でも目に付いた。例えば、『虐殺器官』ではハラペーニョという料理が他所で作られて自宅まで運ばれてくるサービスがある。『ハーモニー』では、真っ赤なトマトのかけらと真っ白なモツァレラチーズにオリーブオイルを掛けたカプレーゼという料理が出てくる。前時代は料理を手軽に食べることができるほど料理が身近であったのだ。
 私の生きる世界では、政府がすべての食事を用意してくれる。弾力のあるゼリー食。栄養の調整されたゼリー食。これだけ食べているのなら、まず餓死することはない。
そして、国を治める偉大なるジョン・スミスに従うなら、何不自由なくこの世界で生きることができる。彼には決して嘘偽りは通用せず、隣の人は隣の人の行動に責任を持つというのがジョンの教えだ。法を犯す様なことは、たとえ家族であったとしても政府警察に報告する義務がある。
 偉大なるジョン・スミスは言う、「団結は繁栄である」と。
 ジョン・スミス万歳。

その日は雨だった。
 朝起きるといつものように、まず顔を洗い仕事に行くための身支度を整えてから短い食事を済ませる。真空パックに詰められた甘味であることを示す赤く透き通ったゼリー食。封を切って、少し細くなっている部分を咥え、パックを握ると甘味が口の中いっぱいに広がった。
 栄養補給ゼリー状食事、所謂ゼリー食は毎日人間が生活するために必要な栄養素が詰まっていて、それだけを食べれば良いようになっている。
 私がまだ若かったとき、戦場にいた頃よりも前からゼリー食は存在している。
 朝食は一分も経たずに終わった。
 ゼリー食はすべて郊外にある政府直下の工場で作られ全国民に毎月無償で配給され、人々はそれを食べている。無償故にこうしてボロマンションに住んでいる私でさえ食事ができているのだ。
 本当にこの国の食に関するシステムはよくできている。
 私はゼリー食を済ませると家を出るまでの時間はソファーでホログラムテレビを見ることにしている。体感時間が早く感じる朝、ゼリー食によって時間的な余裕が生まれたからである。
「みなさん、おはようございます」
 いつものようにテレビ台に置かれた円筒状の投影スクリーンへ、軍服にたっぷりの勲章を付けた顔のホリが深い中年の男性が立体的に、また縮小されることなく等身大で彼の立つ演説台とともに映し出される。偉大なるジョン、ジョン・スミスだ。
 ジョンはしばらくの沈黙の後、大きく息を吸い込んでから身振り手振りを交えながら言った。
「ご存知の通り先日、我が国を侵攻しようと企てた某国との衝突があったが、無事食い止めることができた。敵の規模は凡庸な兵士五千人。それに対しこちらは優秀な兵士が一万人。当然の結果だが、実に喜ばしい。健闘してくれた軍部、兵士の武器を生産してくれた生産部、それから兵士の食事を用意してくれた食品部の諸君、感謝している」
 毎朝、冒頭では国民に対する感謝が述べられる。島国である我が国は攻めにくく守り易いと言われているが、それでも豊富な水資源、広大な土地を狙って度々他所の国から狙われることがある。しかし、その度、政府軍は侵攻を跳ね除け今日の平和を保つことができている。ジョンが言うように、確かに政府軍は優秀なのだ。
 それからいくつか国内のニュースが取り上げられ、朝の放送がいつものように締めくくられる。
「では、諸君。本日も我が国の繁栄のため、日本国民として誠実な行動を期待している」
 ホログラムの偉大なるジョンは満足げに微笑むとスッとその場を立ち去るように消えた。
 私はホログラムテレビのスイッチを切り、いつも通りの時間に自宅を出た。

政府管轄の食品部での仕事を終えるころ、雨はもう止んでいた。
 郊外の街であるが、繁華街は夕方になれば人通りは激しく、よく注意していなければ、すれ違う人と肩がぶつかってしまいそうだ。
ふと、前を歩くスーツ姿で帽子を被っている老いたの男性がズボンのポケットからメモ用紙のようなものを落としたことに気が付いた。私はその雨上がりの地面に落ちて濡れた紙を拾い、罪悪感はありつつもその中身をチラリと覗き見た。そこには『カレーの作り方』と書いてあって手のひらサイズの紙に細かく書かれていた。おそらくは料理の手順書のようなものではないかということが分かった。
 料理は食罪という罪に分類される。現在の日本では犯罪を見かけた場合、速やかに政府警察への通報が義務付けられている。本来なら、私も迷わず政府警察へと通報しなければならない。もし、通報をせず後にこれらの行為が事件にまで発展した場合、私は必ず厳しい処罰が待っている。過料で済めばよいのだが、それ以上に厳しい罰があるのだという噂も耳にしたことがある。特に、食罪に関係する罰は厳しいのだ。
 すぐに通報するべきか否か、もう一度考えた後、私はこの料理手順書を落とした六十歳前後の男性を尾行することにした。もちろん、男性を見逃すためではなく、この国の定めた法律を守るためである。今の暮らしがあるのは偉大なるジョン・スミスのおかげ、貧富の差が著しかった前時代よりも、今日では貧富の差はやはりあるもののごくわずかだ。そのジョンが作った法律を守るために私は、男性を尾行し、そして重大な食罪を見つけ政府警察に通報するのだ。しかし、小説に出てきた料理が目の前に現れるかもしれないと考えたら、ほんの少しだけあのころのような好奇心を取り戻した気がした。
 男性繁華街の駅からは電車に乗ることはなく、またどこかに寄り道することなく、徒歩で少し離れた住宅街へとたどり着いた。おそらくこのあたりに彼の家があるのだと推測できる。私は決して尾行を悟られないように、ときには物陰に隠れ、ときには持っていた端末で誰かと通話和する振りをしてたまたま同じ方向へ帰っているかのように装った。そして、気づかれることなく男性を尾行した結果、ついに料理の手順書のようなものを持った男性の向かっていた目的地を突き止めたのだ。
 周りのマンションと変わらないごく普通の鉄筋造りの建物。しかし、そこはよく見ると様々な店舗が入り交じる雑居ビルの様だった。男性は建物の中に入ると上の階に上るためのエレベーターを狭いホールで待っているようだ。
 私は男性がエレベーターに乗り込み完全にドアが閉まるのを待ってから、ホールに飛び込んだ。エレベーターがどこの階に止まるのか確認するためだ。エレベーターは四階で止まるとしばらくそのまま静止していた。そして、私はエレベーターを一階に呼びつけ、男性と同じく四階を目指す。この目で罪を見定めるのだ。
エレベーターはぴんぽーんという間抜けな音を出して、私をエレベーターホールへと迎えに来た。そして、乗り込み、四階のボタンを押すと上昇を始める。またしても間抜けな音を出して、私は雑居ビルの四階へとたどり着いたのだ。
 さて、どうしたものか。目の前の廊下は清潔ではあるが大分古い造りのように思えた。細い廊下の両脇にはいくつかの部屋があって、一番奥の部屋だけに明かりがついてきた。きっとあの部屋に罪の秘密があるのだ、と思った。
 足音を立てないように、ゆっくりと歩いた。決して気づかれないように小窓の付いた扉まで近づいて中を覗き込んだ。
 私は目にした。先ほどまで私が尾行していた老人はスーツの上にまるで医者のような白衣を着ている。しかし、それが白衣ではないのだとわかった。白衣にしては面積が少なく、身体のほぼ前だけに掛かっている。そうか、あれは料理をするときにスーツが汚れないようにする防具のようなものなのだ。私が普段働いている食品部でも衛生面に配慮をした殺菌スプレーを身体に吹き付けるが、それと似たような役割を果たすのだろう。老人の着ている白というのは汚れが一目でわかるのだ。
 もう一度、上着のポケットにしまっているメモを確認する。料理とはどういうものなのか、実際に見たことがないのだが、このメモは料理手順書なのではないかと思う。
 ドアノブに手をかけ、ふう、と自身を落ち着かせるために息を吐く。まだ老人は訪問者に気が付いていない。
 そして、私は親切な人を装い部屋の中へと入っていく。「すいません、道端でこれを拾いましてね。丁度、電車の駅前あたりです」突然の訪問者に驚いたのか、老人、それと廊下からではは死角になって確認できなかったほかの三人が私の入ってきたドアの方に作業をやめ注意を向ける。 
 部屋の中には物が焼けているようなにおいがした。しかし、物が燃える時に発する嫌な臭いではなく、不快感もなかった。
「これはどうも御親切に。でも、どうしてその場で教えてくださらなかったのですか」
 人あたりのよい声の老人は言った。
「私は貴方が落としたこのメモを見た瞬間、閃いたんですよ。これはきっと料理の手順書ではないかってね。直観です。でも、政府が完全なる食事を配給している、今この時代に前時代の料理をしているなんて人がいたとしたら」私はそこで言葉を区切って、老人とそのほか三人の顔を伺った。料理という食罪を犯している罪悪感を抱く者がいないかどうか。そんな者はここにはいないのだとわかってから言葉を続ける。「私もぜひその料理というモノを見てみたいと。つまり興味です」
「ああ、そういうことでしたか」
 老人はそう言って私からメモを受け取った。
「よろしければ、貴方も一緒にどうですか。ねえ、先生」
 三人組のうちの一人、二十代前半くらいの女性が言った。先生、と言われたのはもう一人の老人だ。それからほかの二人、若い痩身の男性と老いた小太りの男性も女性の意見に頷いたので賛成の様だった。若い方の男性は私と同じ三十代前半くらいで黒縁の眼鏡を掛けている。老いた方の男性は冴えない顔つきをしており、歳は四十代後半のように見える。
「ということですがどうでしょうか。メモを届けてくれたお礼に貴方も料理教室に参加してみては」
「はい、喜んで。ありがとうございます」
 この老人は確かに今、料理という言葉を口にした。それに加えて、教室ということはここでは料理を教えているのだ。なんて悪い人なんだろうか、すぐに政府警察に通ほしなければならないと思ったが、純粋な料理絵の興味が勝ってしまった。今日の帰り道には必ず政府警察署に寄り、ここで見たことを通報しようと自分に言い聞かせた。 
 もしここに料理があるというのなら、今からここで体験しようとしている私も同罪ということになるかもしれないが、この場にいる私以外の人たちは明らかに常習性があるので、料理のせいで気が狂って妄言を吐いているのだと言おうと決めた。もちろん、料理をすると気が狂うなんて副作用がないのは知っている。前時代は、誰もが料理することができていたし、それが日常だった。しかし、今日では小説での話を含め前時代の生活に興味を持つ者は少ない。政府警察の者ならば尚更少ない。料理は罪であるのだと信じているから。きっと私の証言を信じるに違いない。
 私は老人も着ていたエプロンという防具を借りた。エプロンというのは先ほどドアの小窓から覗いていた時に白衣に見えた衣服を保護するための衣服のことだ。


 三人組に加わり、拾ったメモの料理手順書通りに私たちはカレーを作った。人工のではない本物の肉と野菜。それから複数のスパイスという調味料を用いて、メモに書いてあることや老人の教えを頼りにやっとの思いでカレーを作った。これで私は調理罪犯したことになる。ジョンの教えに背いた。
 出来上がったカレーを器に移し、私たちはその味見をした。普段食べているゼリー食の甘味、酸味、塩味、苦味、うま味それから無味のどれにも該当しない。強いていうのなら塩味とうま味に近い味がする、しかし、カレーという料理は政府が定めている基本五味プラス無味のどれにも該当しない。食材で味を改変したのだ。これで私は調味罪を犯したことになる。
「おいしい」と素直に私は言った。普段食べているゼリー食よりはるかにおいしいのだ。カレーにはゼリーにはない食感がある。
「ひとつ、いいでしょうか」私は老人に向かい合った。「これほどまでに素晴らしい食材、つまり、人工ではない本物の肉や野菜はどうやって手に入れているのですか」
「ああ、それはね。契約をしているんだ」
 老人は優しい声で言った。
 料理がほとんどされなくなった今日でも、ごく少数の人がこうして老人のように料理をすることを好む人がいるのだという。そういった人々のために市街地から離れて暮らす貧民層の人々が暮らす地区の一角、所謂、スラム街の住民が自然の食材を作り、料理で必要とする人に販売しているというのだ。
 スラム街の人々にも政府からゼリー食は配給されているのだが、彼らにはこれといった仕事がない。仕事がなければ十分な収入がなく、身に着ける衣服は短いローテーションで回るのでその結果、ボロ切れになりやすい。そうした人たちを不衛生だと名指しして、富裕層の人々は近づこうとしない。貧富の差は決して、縮まることはなく、寧ろ広がっているのだ。
 あるとき政府は、偉大なるジョン・スミスは考えた。スラム街に住む人々を数に入れなければ、食糧はさらに長持ちするのではないか。そうすれば当面の食糧難には見舞われることは無くなるだろう。しばらくして、ジョンはこっそりとスラム街にいる人々を連れ出すように近衛兵に命令しているという。スラム街から連れ去られた人は、処刑されたとか、戦争をさせるための兵士になったとか、政府施設の地下で監禁されているなど様々な噂が立っているが、どれもが信ぴょう性に今一歩達していない。
「次は三日後だ。また君も来るといいよ」
「どうして、もし私が政府警察の人間だったら、あなた方は通報されて死んでしまうかもしれないんだぞ」
「私には君がそんなことをする人の様には見えない。料理に興味があるからここまでついてきたんだろう」
「ええ、確かに」
 私は若い頃、小説のなかで当たり前に出てくる数々の料理を知ることで、料理に興味を持ったのだと話した。それから、駅前で老人が落としたメモを拾ったとき、もしかしたら憧れていた料理を間近で見ることができるかもしれないと期待していたと打ち明けた。もちろん、食罪を起こした犯罪者として政府警察に通報しようとしていることは黙っておいた。
 部屋を出る際に、私は老人と三人に軽く会釈をすると皆も軽く会釈をした。そして、私は住宅街の雑居ビルを後にした。
 しばらく初めて食べた料理、カレーの味をもう一度鮮明に思い出そうとしたけれど、どうしても思い出せなくてゼリー食の塩味を思い出してしまった。違う、おっとスパイスの香りが強くて、と想像するもののそううまくはいかない。叶うことなら私はもう一度カレーが食べたい。
 私は何処へも寄らずまっすぐと帰宅をした。

 約束通り、三日後、私は住宅街の雑居ビルへと向かっていた。
 ふと、目の前に料理教室で見覚えのある人物が目の前を歩いている事に気がついた。二人いた男性のうち黒縁の眼鏡をかけた若い方だ。
 通りを行き交う人は少なく、隣を歩きながら話すことはあまりにも目立ちすぎたので、後ろから「どちらへいかれるのですか」と知っていることをあえて話をかけた。
こちらを振り返ることなく相手が誰かわかったように「おや、これは先日の。ただの散歩ですよ。少々、遠回りをしていますが」と歩みを止めることなく入り組んだ街中を迷うことなく、料理教室のある雑居ビルを目指している。 
私もそれに倣い、しかし、一定の距離を保ちながら後ろをついていく。
辿り着いた目的の雑居ビルに男が入ったことを確認し、数分後、私も続いてビルに入る。狭いエレベーターホールは相変わらずシンと静まり返っている。
エレベーターに乗り、四階に着いたドアの向こうにはあの若い男が待っていた。
「どうも」
 私は軽く挨拶をした。
「あまり表で話したくはなかったのだが、まあ、肩を叩かれなかっただけマシでした。それにしても、会話できるギリギリの距離を保ちながら後ろをついてくるなんて驚きました。なにか特殊なお仕事でもされているのですか」
「いえ、今は食品部でゼリー食の加工を担当しています」
 そうですか、と短く言った男は私に興味を失ったかのように廊下の奥にある料理教室を目指して歩き始めた。今度は表の通りほど、というか私たち以外の人通りは全くなく、政府に監視されている可能性もごく低いため、私は前を歩く男を速足で追いかける。
 料理教室を行う部屋に入ると、この前もいた若い女性と老いた男性がすでに来ていた。
「どうも」
「どうも」
 それぞれが軽い挨拶をしていると料理を教える達人がやってきて、この前の続きであるカレーの作り方を教えてくれた。今回は特別に、料理をしたことがない初心者の私にもわかり易くするための配慮なのか、食材を細かく切る際に老人は付きっきりで包丁の扱い方から教えてくれた。
 ナイフとは似ているものの包丁は慣れが必要だった。何よりも驚いたのは本物の材料の硬さが。ゼリー食とくらべて弾力性もそれほどない。
「後は牛肉を鍋で炒めて、そこに今切った食材を入れる。あとは水を加えて、数種類のスパイスでじっくり煮込めばカレーの完成だ」


 カレーを料理教室の生徒と分けて味わった。
 気が付けば日も沈み、窓からは月が見えた。
他の生徒は先に教室を出て、各々帰路についた。そして、あとには私と料理を教えてくれた老人だけが残った。
「料理っていいものでしょう」
 老人が言った。
「ええ、私は普段食品部で国民のために食品加工をしています。ゼリー食をですよ。その私がこうして料理をしているなんてなんだか不思議な気分です」
ゼリー食は人間が必要なエネルギーを短時間で摂取することができるように設計された。ゼリー食を作るのは私たち食品部の仕事ではあるが、それも政府が発注しているからこそだ。
この国には絶対に侵してはならない法律がある。それは食罪だ。簡単にいうと、政府が用意するゼリー食以外の食品を口にすることは認められていない。つまり、料理そのものが罪なのだ。
「これからもここへ来るといいよ。そうしたら、私はどんな料理でも教えよう」
 老人の言葉を借りれば、ゼリー食は人を選ばないが、料理は人を選ぶのだという。苦手な食材や好む食材は人それぞれだ。それに対しゼリー食は誰にでも食べられっるように設計されている。
 満面の笑みで老人は私に言った。
「その言葉の意味を分かっているのですか。あなたは罪の告白をしているようなものです。もっとホログラムテレビに映る偉大なるジョンを見てください。彼がこの国の食糧事情を変えた。今後、この国の食糧問題は解決したといってもいいか。全てはジョンの功績だ。それから私は、前回ここへ来た帰り道、貴方を政府に通報しようとさえ考えていた。その申し入れはこんな私にはもったいない言葉だ」
 纏まらない考えを思いついた順に話していったが、結局何も纏まらずただ訴えているだけになってしまった。
 老人は顔色一つ変えずに私の話を聞き、自身の考えを口にする。
「今じゃこの国はいろいろなものが変わってしまった。ゼリー食のことだけじゃないぞ。私が若い頃は煙草も酒がどこでも手に入った。今は健康維持の観点から違法となってしまったから、食材と同じく個人の特殊なルートでしか手に入らなくなってしまった。まるで別世界に来てしまったみたいだよ」
 私は変わらないものもあるということを伝えたいだけなんだ。料理をして何が悪い。料理は効率が悪いけど、それは個人に選択する権限があるはずだ、と老人は続けて主張した。
「確かにその通りです」
「これを君に」と言って老人は私に一枚のメモを渡した。それは小さく電話番号が書かれている古い紙切れだった。
「これは一体」
「食材を調達するために必要なものだ。その電話番号に連絡をすれば本物の食材が手に入る値段は決して安くはないが。まあ、手が出せないレベルではない」
「ありがとうございます。しかし、まだ個人で料理をできる様な技量では」
「料理はね、心が大事なんだ。どんな料理でも正しい心で作れば間違いなくおいしくできる」
 今日はもう帰ります、と私は呟くと老人に背中を向けて、教室の出口に向かって歩き出す。
「私の考えをわかってくれたのなら、ここのことは通報しないでほしい」
 老人が私の背中に言葉を投げる。
「もちろん、そのつもりです」
 振り返らずそういうと、私は住宅街の雑居ビルを出てそのまま自宅へ帰った。

次の日は休日であったが、いつもと同じように偉大なるジョンの挨拶から朝が始まった。
「みなさん、おはようございます」
 いつものようにテレビ台に置かれた円筒状の投影スクリーンへ偉大なるジョンが映し出される。
 私はすでに朝食を済ませ、食後の時間をソファーで過ごしていた。
「今日は国民のみなさんにお伝えしなければならないことがあります」
 いつもとジョンの表情が違う。毎朝、まず国に貢献した国民への感謝が述べられるはずだ。小規模から中規模の戦闘に対するジョンから兵士への労いの言葉があるはずだった・
 ジョンは、間を十分に開けた。静寂が場の空気を支配する。
「反逆者が出ました。それも複数名」
 反逆者が出るのはいつ以来だろうか。私がいる限りジョンに反逆しようと企てるのはジョンのことをよく思わないレジスタンスの連中がすぐ頭に浮かんだが、レジスタンスのことを公で取り上げることはないだろうとその考えを忘れた。もしジョンが自身の命を狙っているレジスタンスのことを報道しようものなら、自ら弱点を晒しているようなものだ。ジョンのように利口な指導者はそのようなことはしない。ジョンのいう反逆者とは、レジスタンスとは無関係の人間であると私は推察する。
「我々に反逆したのは数名」
 ほら、やはり少数だ。レジスタンスのように大掛かりな組織ではないと心の中でつぶやく。
「まずはこの三人」
 そうしてホログラムテレビの中に映し出されたのは見知った顔の写真だった。一人は若い女性、料理教室にいたその人だった。一人は、私よりも老いた小太りの男性。そして、もう一人は私が、料理を教わったあの老人だ。
 ふと、昨日雑居ビルを出た後の自分の行動を思い返した。間違いない。私は確かにまっすぐ家に帰ってきた。政府警察署になんて寄ってはいない。
「彼らの犯した罪は、そう食罪である。食品を調達してはならない、調理してはならない、調味してはならない。個人の食材調達ルートを持ち、その食材を調理し、そして、調味した。これらは非常に重大な罪にあたる。食糧は我々の用意するゼリー食でなければならない」
 もう一度、ホログラムテレビに移された顔とそのすぐ近くに表示されている名前が一致しているかどうかを確認する。そういえば、私は彼らの名前を知らないということに気が付いたので、もう一度注意深くそれぞれの顔をみた。
 間違いなく彼等の顔であった。
「この罪の重大さは諸君にもわかるだろう。ゼリー食を我々が食べているのはいずれ来るであろう食糧難を回避するためだ。現在、我が国の人口は二億人。これは五十年前の日本の人口よりも四割多いことになる。さらに予測では今後十年以内にさらなる人口増加で二億五千万人を超える。人が増えればそれだけの食糧が必要になる。このような困難な時に料理をするなど反逆者に他ならない」
 ジョンは声を張る。
 そして、わずかな沈黙の後、私に戦線布告した。
「残りの反逆者も必ず見つけて逮捕すると我が国民に誓おう。これを見ている反逆者の君、私は必ず君を捕まえる。そう我々人類のために」
 ホログラムテレビ越しに私とジョンの目があった。ジョンがそのまま演説台の前から立ち去ると同時に放送も終わった。
 溜息をつき、私はしばらくの間身動きを取れないでいた。ジョンに目を付けられてしまった。
 その時、私はあの男のことを思い出した。料理教室にいた同じ歳の頃の男だ。ジョンの演説に出てこなかったということはまだ捕まっていないということだろうか。しかし、話したところ勘の鋭そうな男であったが、であればもうどこへ逃げ出してしまっているかもしれない。連絡をしようにも、連絡先を知らない。
 私は部屋の中を見回した。すると若いころか何度も読んでいる本が収まっている本棚に目がいった。その中から一冊を取り、中を開くとそこには食事について書かれていた。その本は前時代に書かれたもので、食事はその当時のモノと推測できた。今のゼリー食とは違い、家族がいくつもの料理を囲む和やかな時間が想像できた。
 気が付くと電話番号を端末に入力していた。最後の日、老人からもらった古いメモだ。数回のコールの後、慌てた様子の男が電話に出た。
「すまないが。ホンモノの食材の注文を頼みたい。カレーを作りたいんだ」
「ああ、おまえさん正気なのか。今、ホログラムテレビ見てなかったのかよ。食罪を犯す気か。今は監視の目がいつもより厳しくなっているまた今度にしな」
「見ていたさ、あの人たちは私の友人だ。だからこそ、私は料理をしようと思ったんだ」
「ああ、そうだったのか。そりゃ、気に毒に。まあ、あんたがそういうならこっちも断る理由はないね。そういう商売だからさ」
 住所を告げるとすぐに昼までには届けるということだったので、急ごしらえではあるが兵士時代に使ってたナイフを包丁代わりにすることに決めた。
 その日の昼。来客を告げるインターフォンが鳴り、玄関先でカレー一人前の食材を受け取り、代金を支払った。金額を見て、なるほど、確かに払えなくはないが、そう毎日はできそうにない金額だった。
「あんた気をつけたほうがいいよ」
 帰り際に配達に来た男が言った。

荷物の整理をしていると本日二度目のインターフォンが鳴った。
 ちょうど切った食材を鍋に入れ、火にかけていたところだったので一度コンロを止めた。
 驚いたことに、私の部屋には電気式コンロがあったのだ。このマンション自体かなり古い物らしいので、格安で借りることができたのだが、まさかまだ料理が一般的であった前時代から存在していたものとは思いもよらなかった。
「はーい、どちら様ですか」
 インターフォンに出ると見知った相手だった。彼がスーツを着てるところは初めて見る。そして、来客が私を頼ってきたのだと思うと同時に玄関まで駆けていき鍵を開けた。
「あんたか。ホログラムテレビのジョンの声明を見たんだろ」
 私は料理教室で会っていたあの若い方のもう一人の男性を玄関に招き入れた。ただ、どうして私の住所がわかったのか尋ねはしなかった。できるだけ早く情報を交換し、策を考えたい。それだけ、お互い急を用しているのだ。
「この匂いは何でしょうか」
 男は私に尋ねた。今日の声音はいつも違い、力が籠っているように感じた。
「何って、カレーを作っているのさ。今朝のジョン・スミスが料理教室にいた人たちを逮捕したっていうのをあんたも見ただろ。それで私は本当に料理が悪でゼリー食は善なのか、自分で確かめてみようと思ったのさ」
「なるほど。君の対応次第では、俺も見逃してあげようと思いましたが、やはりそうはいかないみたいですね」
 男はスーツのズボンから銃を取り出し僕に向けた。よく見ると彼は襟に政府警察のバッヂをつけていた。
「そうか。あんたは政府警察官。ジョンの部下か」
「その通り、俺は偉大なるジョン・スミスの右腕。料理教室にスパイとして潜入し、料理をするバカどもの行動を監視していた。もうすぐ一斉に摘発だって時、君が来たからレジスタンスに覚られたのかと思ったよ」
 男は私に迫った。今すぐ銃で撃たれるか、大人しく政府警察署まで連行されるか。玄関には男のほかにも複数の政府警察官がいた。おそらく男の部下といったところだろう。
「あんたも料理を食べてただろう。あんた自身は罪に問われないのか」
「俺が料理を食べた。あんなもの腹に入れたそばからトイレに駆け込んで残さず吐き出したよ。あの老人も相当な頑固だった。昨晩、俺が何度拷問しても決して、最後まで料理をやめるとは言わなかった」
 最後まで。あの老人はどうなったのだろうか。殺されたのだろうか、それともまだ生きているのだろうか。他の二人はどうなった。
 私は男に反撃するため、男の視界から外れるようにキッチンへと転がり込んだ。玄関になだれ込んでくる自身の部下を自ら静止し、男は私との距離を詰める。そこで私は今まで使っていたナイフと握り、男の懐に入り込む、銃弾が顔のすぐ側を掠めたが気にしない。当たればどうせすべてが終わる。まだ私の身体が動いているというのなら、それはうまく躱せた証拠だ。
 しかし、男も黙って懐に潜り込ませたままにはしない。膝蹴りを繰り出した。私はそれを左肘で迎え撃ち、右腕では相変わらずナイフを握りしめる。
 男は空いた両腕をうまく使い私の肩に掴みかかり、そのまま床に投げた。天地が反転したように視界が回り、最後には頭を強く地面に叩きつけられた。男は銃で私の両足をパンパンと撃ち、地を這う以外の行動を奪った。
私は痛みに悶えながら銃を下げるように男に言い。そして、両手を差し出し、手錠を掛けられた。
「午後一時三十五分、調達罪、調理罪、調味罪により男を現行犯逮捕」
 静かに言い放ち、私を連行するように部下に告げた。

気が付くと私は広い部屋にいた。広いという表現が正しいかはわからない。私の周囲一メートルくらいの視界しかないほど部屋は暗く、その先が全く見えないから私は暗闇に果てがないほど広い部屋にいるのだと思った。
 私は政府警察の男に逮捕された。両足には銃で撃たれたときの痛みがまだ残っている。
 ガチャンと音がして、一人の男性が真っ暗な部屋に入ってきた。
「暗い部屋は不安だっただろう」開口一番に私を気遣うようなことを男は言って、部屋の電気のスイッチを入れた。ここは窓のない前面コンクリートの小部屋で、私はその中心で椅子に縛り付けられていたのだった。
 まっすぐ近づいてくるその男のことを私はよく知っている。毎朝欠かさずホログラムテレビで見てきた顔だからだ。軍服にいくつもの勲章を付けたこの国一番の権力を持つ男、偉大なるジョン・スミスだ。
「なぜ、君がここにいるか知っているかね」
「私が罪を犯したっていうんでしょう」
「ほう、どんな罪かね」
「食罪ですよ。調達罪、調理罪、調味罪。前時代はみんなやっていたことだ」
 私は枯れた声を張り上げた。椅子に座ったままの私を背の高いジョンが見下ろす。
「しかし、今は罪だ。私の声明を見たのならわかるだろう。今、この国は食糧難に直面しようとしている。君は人口が爆発的に増えたらどうするかね、しかも島国で爆発的にだ。私はこの国の権力者である前にひとりの人間だ。まさか溢れた者を殺して回るなんてことはしたくない」
「じゃあ、スラム街で人さらいをしているって噂は」
「そんなものは、あくまで噂に過ぎない。所詮、レジスタンスが私の失脚を狙ってのことだろう」
 政府はジョンの命令でゼリー食の普及を目指した。その結果、低コストで生産することができるゼリー食が今日のように料理にとって代わるようになったのだ。
 私はジョンの言葉をただ聞くことしかできない。反論すればすぐに腰に挿した銃が抜かれ、今度こそ心臓を撃ち抜かれるだろうと思ったからだ。
「本来なら君は想定外のはずだったんだよ。部下の報告では、料理教室などという反逆組織は三人のはずだった。しかし、いつの間にか君も加わり四人になっていた。そのあたりの理由を詳しく聞かせてもらおう」
 口を開かずに沈黙していると、パンと渇いた音が狭い部屋で何度も反射した。ジョンは腰から抜いた銃で一発撃ち、私の足元に小さな穴をあけていた。
「質問には答えて貰わないと困る。次はこの床のように君自身に穴を作ることになる」
 私は息を飲み込む。
「初めはほんの出来心だった。信じてほしい。途中まで、私は正しいことをしようとしていた。仕事帰りに目の前を歩いていた老人がメモを落とした。そこには料理の、カレーの作り方が書いてあった。私は政府警察に通報してやろうと後を付けた。すると雑居ビルにある料理教室についたんだ。本当のことだ。信じてくれ」
 ジョンは弾を込めた銃を私に向ける。
「それから。続けたまえ、なぜ料理を口にした」
「若い頃、私は本で読んだことがある。前時代は、ジョンが来る前は普通に料理ができたと。それ以前に書かれた本にはほとんど料理が出てきていた。昔はきっと自由に料理ができたんだ」
「もちろん、前時代は自由に料理ができたとも。昔は昔、今は未だ。理解したまえ、団結は繁栄であると。例外は許されない」
「捕まえた老人と女と男はどうした。殺したのか」
 ジョンはムッとして、眉間に皺を寄せたが引き金をしかなかった。
「さあ、どうだったかな。しかし、もう二度と君と会うこともない」
 あれを持ってきてくれ、とジョンはドアに向かって叫んだすると皿に盛られたカレーが運ばれてきた。ジョンは私と椅子を縛っている紐をほどき、その皿を持たせた。
「床に空けたまえ。わずかにでも私に対する、国に対する忠誠心が残っているのなら、その皿に載っているモノを床に空けたまえ」
 上着のポケットからジョンはゼリー食を取り出し、私の目にチラつかせる。従えば、これをやると言っているのだ。つまり、私がカレーを床に空ければ、私は助かるかもしれない。
「さあ、どうした。早くしたまえ。私は待たせる男が嫌いでね、銃で殺してしまいそうだよ」
 そう言って、右手に持った銃で私を殴った。
 やっとたどり着いた自由への手がかりをあっさりと床に捨てていいのかと必死に思考した。床にはシミができていた。撃たれた者の血液の後なのか、それとも捨てられたカレーのシミなのか。
 死にたくない、という生存本能が働いて私はまだ考えている途中であるというのに、私の身体というやつは皿を持っている手をひっくり返した。力をしなって落下した皿が割れる。
「それでいい」
 満足そうにジョンが言う。
「おめでとう。君は生きて帰れるよ。他の奴らとは違ってな」
 なんということだろう。私は彼らを裏切ったのだ。料理を教えてくれた老人を。料理教室に誘ってくれた女性を。料理を一緒に食べて、笑ってくれた男性を。
 私は椅子から転げ落ちて泣き崩れた。
「私は罪を犯した。ジョン、私を殺してくれ」
 ジョンに縋ったが、すでに彼は銃をしまい、足にしがみ付く私を気にした様子もなく小部屋のドアに向かって歩き出していた。
「それはできない。改心した善良なる我が国民を殺すことなど、私にはとても」
 おかえり、我が国へよく戻った、と呟いて部屋から出て行った。
 私はその後、部屋に入ってきた複数の政府警察に連れられて個室へと通された。そこで私はまるまる一か月間、日常生活に戻るための訓練を受けさせられた。ホログラムテレビの付け方から、風呂の入り方まで。そして食事の仕方まで徹底的に指導された。
食事をするときはまず味を選ぶのだ、と思いださせられた。甘味、酸味、塩味、苦味、うま味それから無味の基本六味の中から好きなものを選ぶのだと。一つの味を食べ過ぎても、どうせ翌月には無償で補充されるのだから本当に好きな味を選ぶことができる。
 本当にこの国の食に関するシステムはよくできている。


 当初の約束通り、私は元々住んでいたマンションに返されることになった。いざ、マンションに帰ってみると若干の違和感に気が付いた。玄関を入ってすぐ近くの部屋、そこにはゼリー食を冷蔵保存する装置があって、向かい側には洗い場がある。そのすぐ横には何かあったはずなのだが、きれいさっぱりなくなっていた。私が政府警察署にいる間にリフォームでもあったのだろうか。なにしろ一か月以上部屋を開けていたのだ。そういうこともあるかもしれない。
 そうこうしているうちに、偉大なるジョン・スミスの番組が始まる時間であることに気が付いた。私は急いでリビングのホログラムテレビのスイッチを入れた。


「みなさん、おはようございます」
 いつものようにテレビ台に置かれた円筒状の投影スクリーンへ、軍服にたっぷりの勲章を付けた顔のホリが深い中年の男性が立体的に、また縮小されることなく等身大で彼の立つ演説台とともに映し出される。偉大なるジョン、ジョン・スミスだ。
 ジョンはしばらくの沈黙の後、いつものように大きく息を吸い込んでから身振り手振りを交えながら言った。
「ご存知の通り先日、またもや我が国を侵攻しようと企てた某国との衝突があったが、無事食い止めることができた。前回と同様、敵の規模は凡庸な兵士五千人。それに対しこちらは優秀な兵士が一万人。当然の結果だが、実に喜ばしい。健闘してくれた軍部、兵士の武器を生産してくれた生産部、それから兵士の食事を用意してくれた食品部の諸君、感謝している」
 毎朝、冒頭では国民に対する感謝が述べられる。島国である我が国は攻めにくく守り易いと言われているが、それでも豊富な水資源、広大な土地を狙って度々他所の国から狙われることがある。しかし、その度、政府軍は侵攻を跳ね除け今日の平和を保つことができている。ジョンが言うように、確かに政府軍は優秀なのだ。
 それからいくつか国内のニュースが取り上げられ、朝の放送がいつものように締めくくられる。
「では、諸君。本日も我が国の繁栄のため、日本国民として誠実な行動を期待している」
 ホログラムの偉大なるジョンは満足げに微笑むとスッとその場を立ち去るように消えた。
 私はホログラムテレビのスイッチを切った。
 
偉大なるジョン・スミス万歳。

料理という罪

料理という罪

  • 小説
  • 短編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-30

CC BY-NC-ND
原著作者の表示・非営利・改変禁止の条件で、作品の利用を許可します。

CC BY-NC-ND
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8