光の森

 きぬ、やわらかな、いのちにまかれていた、きみたちが、枯れ果てた森をみつめて、ためいきをつく。ぼくは、きょう、だいすきなひとが、えいえんをてにいれたことを、しった。どこにいたっけ、そのとき、たしか、家の近くの、踏切で、電車が通りすぎてゆくのを待っていて、きみは、かろやかに、ぼくのみみもとで、ささやいていったのだ。えいえんとは、ここちよく、けれど、いまはまだ、すこしさみしいと。
 フルーツパフェを、とつぜん、たべたくなって、きみとよくあしをはこんだ、駅前の、いつもにぎわっている商店街の、わきにはいったところにある、ちいさな喫茶店の、それを、ぼくは、ふらりと、たべにいった。オレンジ、キウイフルーツ、バナナ、など。生クリームだけを、ぱくり、と、くちにいれた瞬間、きみのかお、すがたかたち、声が、ありありとよみがえってきた。否。きみは、えいえんとなり、ぼくのなかに、ぼくをとりまく、すべてにとけたようなものだから、よみがえる、というよりは、ずっと、いる、感じなのだが。感傷にひたってる、と思いながら、ぼくは、フルーツパフェを、ぱくぱくたべた。
 枯れ果てた森には、かすかに息をする、ちいさな種子がねむっている。やわらかな、いのちの、きみたちが、いう。光がみえる。

光の森

光の森

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-18

CC BY-NC-ND
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