そこにいるから

きょうはいつもきのうの顔をしていて
つかいふるした絶望をひきつれてやってくる
はじめはそれを持て余していたけれど
いまでは怯えることもなく、むしろ
そのすがたをみると安心してしまう
あるべきものが、きちんとそこにあることに
まるで気の置けない昔なじみのような
鎖縁の関係みたいに
わたしはそれを慎重に そして丁寧に
うすくて脆い硝子細工のようにあつかう
あるいは、わたしがそのようにあつかわれる
「わたし、ひとりでもやっていけるわ」
そう口にするのは、一体どちらが先になるだろう
だけれどわたしはもうしっている
あなたが、わたしなしでは生きていけないことを
わたしも、あなたなしでは生きていけないことを
あしたも、きょうとおなじ顔をしていることを

そこにいるから

そこにいるから

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-18

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