ペーパーナイフ

ペーパーナイフ

朝起きて、朝が新鮮じゃないときには二度寝する。新鮮だって感じる朝はどんな朝? 朝日が刃物みたいにとがっていて、角膜を切っていくときかな。カッターナイフかメスかわからない。もし、ペーパーナイフだったらどんな感じ? 切り開くって言葉にとらわれて、他の感覚がフェードアウトしていく?
彼の指先に小さな切り傷があった。そこから人生を彫ってえぐって、うねりを、曲線を、なんてことはできなかったから、自分探しなんて空想だよってわかる。探すべきものはもうすでにあって、ペーパーナイフで切って続きを読む昔の本みたいになってる。紙を、切る感覚。刃物を滑らせたときに特有のシュッと擦れる音。薄い瑠璃色に光る音。白紙だってとがめないから、僕らには青空が遠くて、その青空すらも四角く切り取られている、ような気がする。
薄いものにはりつきながら、薄いものと薄いものの行間に住んでいます。紙の端っこでも指を切ってしまうことがある。薄い皮膚。紙のためのナイフだから、ペーパーナイフ。シュッと切って、続きを開く。まっすぐ切る、生まれる直線、青空、切った、シュッと切って、サッと光って、いま、生きてる。

ペーパーナイフ

ペーパーナイフ

タイトル通り、ペーパーナイフについてです。薄っぺらい作品なので、ぜひ御一読ください。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-05

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