【風のルウリィ】最終話

マチミサキ

閉会式も終わり
オレンジの陽は
人もすっかり少なくなった
グラウンドに
ひとつの長い影と
ふたつの短い影を作っていた。

美保
『妹を助けてくれて本当にありがとう』
その姉に頭を抑えられ
万智をにへへと上目遣いで見ようとしながら
幼女も言葉を繋げた
『ありがとうございました!』

万智
『まあ…無事で良かった』

美保
『当然、あの約束も守るから!』

万智
『う~ん…それもいいよ。お節介ついでにさ、
それと結局一位でバトンは渡せてないし。』

美保
『だって、それは!』

万智
『いーよ、それも全部わたしの選択で
わたしの責任。』

そう
ぶっきらぼうに答え
向きを変え

気を使っているのか
少し離れた場所で待ち続けている和美の所へ
万智は走っていった。


和美
『美保ちゃんから全部聞いたよ、でも本当に
あなた…お金を貰うつもりだったの?
そもそも心臓がって言ってた癖に。
そんな人があんな動き方出来る訳ないでしょ?
私に…みんなに嘘ついてたの?』

そうは
いうものの
和美に幼女を救った自分を本気で
怒ることなど
出来ないことも解っている

万智は
悪びれることもなく
こともなげに答えた

『だから、心移植費用を貯めようと…』

和美
『・・・どこまでホントなのやら・・
まあ今回だけは許してあげる。
よくやったよ!』

万智
『ダッシュが行き過ぎて
そのまま落ちちゃったりしても
ウケるかな、とも思ったんだけど。』

和美
『ホントにそういうのさえ無ければ!もう!!』

アハハと
お互いの身体をパシパシと叩きあう

それを校舎のベランダ
上空から見詰める
二人の視線があった。

真純と佐助だ。

真純
『凄いね、彼女は。
やっぱり仕切り直すべきだったんじゃないかな』

佐助
『万智の左手の爪に気が付かなかったか?
生爪が剥がれてたんだぞ?!
多分、見えない所も怪我してる。』

真純
『っ!・・・本当に凄いね・・。』

佐助
『アイツのスタート、普通じゃないだろ?
その秘密がさっきので解った気がするよ』

珍しく
饒舌で
普段は見せぬ優しげな佐助の態度に
驚きつつ、真純は首を傾げた。

『やっぱり才能ってこと?』

佐助
『それもある、でもそれ以上に
アイツは元から俺達とは意識そのものが
違うんだ。』

真純
『それなら、私だってっ!佐助君もっ!』

佐助
『違う、勿論俺だっていつも人並み以上に
真剣にやってるし
きっとお前だってそうなんだろうさ』

真純
『なら、』

佐助
『アイツはきっと生き方そのものが違うんだ、
レース前の掛け声があるだろ…
位置(オンユア)について】だの【用意(セット)】だのってさ、アレ。』

真純
『・・・』

佐助
『きっと万智はレースも試合も特別な場も何も
関係なく常にその状態なんだ、
それこそ普段からな。』

真純
『そんなこと?!』

佐助
『ある、と思うんだ、アイツはな…』

数秒
考え込み
真純の目を真っ直ぐに見つめ
決意したように
言葉を繋げる佐助

『・・・これは・・・
もういっか、誰にも言うなよ!
万智はな、実の親から疎まれてたんだよ、
それでガキの頃に街から山ん中の俺らんトコに
来たんだ、アイツの爺さんと婆さんに
引き取られてな。』

真純
『・・・!』

佐助
『アイツが来る筈だった初日に
迎えにいった里では大騒ぎになってな、
親に見知らぬ山ん中に置き去りに
されちまったんだ。
捜索隊も出たんだが、見つからなくてな…
ロクに知らない山ん中に丸2日だぜ?
ああ、ちょうどお前に花束を渡してたガキが
居ただろ?あのくらいの頃だ。』

真純
『無事・・・だったの?』

佐助
『俺も当時に寝てたら夜に大人たちが
騒いでいて目が覚めたのは覚えてるよ。
そんで見付かった、という報せは聞いたが
無事は無事だが・・・
なんか壮絶だったらしいな。
なんせ、救助でようやく発見した大人に
斬りかかって殺しかけた、
とかなんとか・・・』

何故か自分のことのように
自慢気に続け
肩を竦めて語る佐助
『しかも盆真っ只中の嵐の中だぜ?!
今の俺でもビビるわ!そんなんよ!!
夜の山ってのは本当に怖ええんだよ!
いや1人きりじゃ昼間でも、だ!』

・・・・



『ホントウニスゴイネ』


苦笑いして
笑顔をひきつらせながら
真純はなんとか答えた。

佐助
『ははっアイツは本当に凄いんだ、結局
今回も俺の敗けだ。お前もそう思うだろ?』

真純
『そうだね・・・。』

なんだか
敗けだ、といいながらも
嬉しそうに笑う佐助は
最後にこう言葉を締め括った。



━━━もし本当に神様ってのが居るんだとしたら

━━━━━━俺達に味方してるのは
【幸運の女神様】ってやつなんだろうな



━━━━━━━で、万智(アイツ)にはきっと・・・



【終】

【風のルウリィ】最終話

【風のルウリィ】最終話

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-07-05

Copyrighted
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