盲斑について

盲斑について

昼夜逆転人間だけが住む町で大規模な停電。それでも朝が嫌いならきみは真の自称詩人だ。人類が滅びたあとにナメクジが覇権を握る時代がくるんだけど、ナメクジたちはきみの化石を観察して、苦悩がどうのこうのと議論してくれる。おめでとう。ナメクジたちはきみの頭蓋骨を称えて、そこに街をつくる。たくさんのナメクジが隙間なく押し合いへし合いしていっせいに左眼窩から出たり入ったりする通勤ラッシュ。文化的な日々の暮らしは知的生命体にふさわしい。

無言電話を受け取ってしまった。知らない番号だし、嫌がらせをされる覚えは全くないから、たぶん不特定多数に向けられたものだ。無言電話なのに、夏だから、電話の向こう、彼の家の窓は開いていて、遠くで猫が鳴いたのが聞こえてしまう。さびしかった。日曜日だからすることがない。ヤッホーとでも言えたなら少しは楽になれたかな。時計の秒針がカチコチ鳴るのが急に腹立たしくなるタイミングがわからないけれど、スムーズに動くやつに替えたらそれはそれで不気味って思うタイミングがあるのかもしれない。忘れていたかのようにパソコンを起動して、なんか打ち込んでみたら見事なほどにら抜き言葉を連発していて、僕はすっかり満足した。退屈だけど眠くないからなんとなくだけど盲斑の存在を再確認できる。明日があるっていう信仰が盲斑を縁取るから、息も絶え絶え生き延びています。

盲斑について

盲斑について

無言電話を受け取ってしまった。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-07-02

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