手紙を開く/砂漠が覗く

砂絵、微かな砂の楼閣を築きて近代建築家は死せり

絹の砂が回転舞踏し
円錐の記念碑時計に
鳴響する
水滴のヴィオロンの音域幅にて

貌の翼 百頭蛇を濯ぐ裸婦
悪魔花 水滴プラネタリュウムの淵を歩び
耳道庭 かすかな墓陵に血柵に凭れて
純血の手綱乾かぬ朱肉に ギロチン

純粋幾何学
形而上的物象
抽象なれ
抽象なるもの

腺病質の建築‐製図
吾等 艱難無き世界像を憎みつつ
存続を駈け
隔絶には拍車を
融解には鏤刻工の鐙を

死骸美術
被造物の喩
狂奔と緘口と
脳裏迷妄に漂流し
流離する
伝染性催奇 その精蘂紛
博物標本

みづこみどりごみづけるを
みづこみどりごみづけるを
みづこみどりごみづけるを
ひとつ腐乱、
ふたつ萱草、
巣棚繭、
法医学の血の滑り

児の乳母車が血塗れだ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-06-29

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