ひまわり畑でみる夏の夢はやさしさばかり
ひまわり畑は、こぐまたちの楽園だった。夏の空のあおさにまけないくらいのあおいリボンを、こぐまたちはしていて、わたしは、こぐまたちが歌い踊るようすを、ひまわりの群れのかげからそっと、ながめていた。こぐまたちは、透明なソーダ水でかんぱいをして、きいろがあざやかなとうもろこしをかじって、クラッカーにクリームチーズや、サーモンや、ジャムをのせたものを、ぱくぱくとたべていた。えんかいみたいだ、と思いながら、わたしは、ひまわりたちのあいだにしゃがみこみ、ときどき、空をみていた。きょうの空は、こぐまたちがしているリボンに、牛乳をとかしたみたいな薄さの、あおだった。一匹のこぐまが、わたしの存在にきづく。「きみは踊らないの」ときかれて、踊りはにがてなのだと、わたしはこたえた。「かんたんだよ」とわらって、こぐまが、かろやかなステップをふむ。ながくも、みじかくもないうでを、ながれるようにうごかして、ターンする。ターンすると、くびにまかれたあおいリボンが、ふわりとゆれる。ほかのこぐまたちが、愉快そうに手を叩く。最高気温三十度のはずなのに、ひまわりのあいだは、なんだか、ひんやりとしていて、こぐまたちは、暑さなどかんけいないみたいに、さわやかに歌い踊ってる。うまれてから一度もきいたことがない歌なので、こぐまたちの世界でしか流行っていない歌なのかもしれない。あかるくてたのしげなのに、うっかりあやまって一滴だけ、かなしみをこぼした感じの、リズム。「いっしょに踊ろう」と、べつのこぐまがわたしの手をとり、こぐまたちの輪のなかにみちびいた。こぐまたちの楽園は、ひまわりと、ソーダ味のアイスの、においがした。
ひまわり畑でみる夏の夢はやさしさばかり