電気とか

電気とか

天気雨だな、と思って空を見上げたら、すでにただの雨に変わっていました。雨って特別だって思えるのは案外小学生だけかもしれない。二十年以上生きてる、その中で雨の日は何日? 誕生日が六月の友人は、なぜかくもりがよく似合う。He is inどんてん。結構せこい。
ギグケース背負って地下鉄に乗る、頭悪そうな高校生の男の子。スマホ片手に歩いてる。傘とカバンだけが雨に濡れて、ギターが音を出さないなんて、とんだ皮肉だ。赤点のテストも、片思いも、それなりに平凡なまま。だから割とどうだってよくて、ギグケースの中のギターだけが登場人物で、雨の中放り出されて、「僕はどうすりゃいいのさ?」って聞きたいんだけれど、日本語がしゃべれない。ずしゃずしゃばりーん。

背景になるひとと、背景。その違いは、なに。

雨とかくもりとか、どこかで雷が光る。たしかに雷なんだけれど、みんなそう言うんだけど、電気とか、そんなものとして片づけてしまいたい。物理の教科書にも書いてあるから、って理由で。引きこもって、ビルに囲まれて、四角いグミとか噛んでいたい。直線じゃないものを受け入れて、心臓と肺をぎゅうぎゅうにしてしまったら、雨がからだの中からこぼれるんだよ。H2Oにもまれて、窒息する。にげたい。みたくない。死ねって言わせてくれ。罵ったら、罵ったぶんだけ強くなれるような気がする。びっくりマークが出てくるたびに、助詞を階乗してやる。いつか地球に水平線を引いた、遠くの国のご先祖様は、意外とぼくに似ているのかもしれない。

電気とか

電気とか

ギグケースの中のギター。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-06-21

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