雨と三色菫

濡れた三色菫が綺麗だった

あらゆる日々が鮮烈さを失い残像になる

痣が疼いて仕方がないんだろう

わたしじゃないわたしにそう嘲られている気がした

あの澱みない杏色の夕焼けに縋りたかった

地平線の彼方には使い物にならなくなった焼却炉がある

届くとか届かないとか 今となってはどうでもよかった

赦されない懺悔を続けることに意味は無いなんて

あなたの口からそんな台詞 聞きたくなかったよ

いつしか粗略な歩き方になってしまったきみの道には

明晰な足跡なんか一つも視えなくて 幽霊になってしまったのかと思った

はじめからそうだったのかもしれないとも思った

きみは本気で執着したこともされたこともないんだろう

そうわたしに告げたのは他でもないあなただったのに

また淡くなろうとするの わたしの知らないところで

わたしの知らないところで泣いてたこと 無くそうとしないでよ

美しくならなくていいから ならなくていいのに

霖雨に浸された追憶が 泡沫が爆ぜるように宙で弾ける

抉れた痣に血が染みて痛い

濡れた三色菫が綺麗だった

雨と三色菫

雨と三色菫

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-06-14

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